プログラミング教育実践事例研究会 2022 春 ~EdTech導入補助金によるMonaca Educationの活用事例~ セミナーレポートVol.4
Monaca Educationを活用した自学自習によるプログラミング入門
国立奈良工業高等専門学校 内田眞司 教諭
全国各地でプログラミング教育に挑む、熱心な先生方。その成果やノウハウを共有し、明日の情報教育発展を目指すのが「プログラミング教育実践事例研究会」です。2020年のスタートから地道に開催を重ね、すっかり恒例となりました。今回は、経産省のEdTech導入補助金を活用して弊社のMonaca Educationを導入した各校から4名の先生方をお招きし、2021年度の実践事例をご発表いただきました。
高専だからといって、プログラミングスキルが高いとは限らない
内田眞司教諭の奈良工業高等専門学校は、ITを含む工業分野のスペシャリスト養成機関。中でも同教諭が受け持つ情報工学科において、プログラミングは切っても切れないジャンルです。しかし意外なことに「必ずしも学生たちはプログラミングに高いスキルや関心を持っているわけではない」と内田教諭は言います。
プログラミングスキルに関して学生にアンケートを行ったところ、「不安」と答えたのは受講者40名中19名、「やや不安」が15名。「自信がある」という回答はわずか1名という結果でした。
プログラミングへの興味を引き出しつつ、受講者のレベルに応じた授業を
こうした背景の中で「これまでも、ずっとプログラミング授業に問題意識を抱いてきた」と言う内田教諭。一つは、「プログラミングへの興味を引き出す」こと。そしてもう一つは、受講者のレベルに応じた内容を提供すること。最初からプログラミングスキルに長けた学生もいますが、ほとんどキーボードに触ったことさえない学生もいます。「彼らに一律で同じレベルの授業をするのはやはり難しいです。初心者には丁寧な説明をしたいですし、経験者には退屈させないようにしたいなと」と語ります。
それに適した教材を探す中でMonaca Educationと出会い、学生同士が教え合いながら協働できる「プログラミングの自学自習」の授業を目指しました。
解説は動画で事前配信、授業は自学自習の実習を中心に
授業は「情報工学概論」の一部として実施。同概論は、コンピュータの仕組みと動作に関する座学が中心です。しかし、それだけでは学生も退屈しがち。そこで、各単元の合間にMonaca Educationを使ったプログラミング実践を組み込みました。対象は1年生42名。前述のようにプログラミングが得意とは言えない学生たちであり、2年次に本格的なプログラミングの授業が設定されているため、ここではかねてからの問題意識でもあった「興味付け」を目的としました。
授業内でのプログラミングの割り当ては80分×5回。初回にブロック崩しアプリの起動と実践、2回目で果物図鑑アプリ、3回目でおみくじアプリ、4回目~5回目にかけて最終課題を自主制作する流れです。
講義方針は、Monaca Educationの公式テキストに完全準拠して進めていくこと。自学自習が中心であるため、解説的な授業は事前に動画を撮影しておき、Microsoft Teamsで配信します。授業は実習が中心で、自由に質問ができ、学生同士の教え合いももちろん可能です。また、質問と回答はMicrosoft Teams内の「チャット」で全員が共有し、事例としてストックしていきました。
学生同士で相互評価。「オリジナリティ」の評価に振れ幅が目立つ
こうして少しずつ経験を重ねながら、最終課題で「モバイルアプリを作りなさい」というお題に挑戦します。学生の主体性や発想を重んじ、アプリのジャンルは指定しません。ゲームでもライフハックでもOKです。これを約2カ月かけて完成させます。
完成品の評価は、学生同士の相互評価としました。総合評価、おもしろさ、オリジナリティという3観点について5段階で評価します。「ここで注意したのが、絶対評価で採点することです。他の学生との比較をするのではなく、純粋にそのアプリを評価するように指示しました。相対評価にしてしまうと、著しく低い点数をつける(つけざるを得ない)ケースが発生するからです」と内田教諭。確かに、いきなり低い評価をつけられては学生の意欲も低下します。プログラミングへの興味付けを第一義に置いた授業では、重要なことかもしれません。
評価結果の中央値は、総合が3.9、おもしろさが3.6、オリジナリティが3.8。特にオリジナリティについては評価の幅が広かったのが特徴でした。「サンプルシートのパラメータを変更しただけ」といったものは、比較的低評価になったようです。
半数が講義型を、もう半数が自学自習型を希望
では、高評価を得たアプリにはどんなものがあったのでしょう。特に評価が高かったのはこの二つ。「日本各地の天気が分かるアプリです。サンプルアプリの段階では東京の天気しか分かりませんが、それを都道府県別で分かるようにし、天気のイメージが写真で表示されるものでした」。さらに「目的地の駅に近づくとスマホのバイブレーションが作動し、停止ボタンを押すまで止まらないというアプリも。これで乗り過ごしを防ぐというスグレモノです」。
学生たちも楽しめたようで、授業後のアンケートでは「自分から積極的に取り組んだ」「自分なりに工夫した」という回答が8割以上。「うまくいかないときに試行錯誤した」という回答は9割にも迫りました。「プログラミングの醍醐味である『トライ&エラー』を経験しながらアプリを完成させたという意味では、教育効果も高かったのではないか」と一定の評価をしているそう。
一方で、「自学自習ではなく、講義型のほうが良かった」と答えた学生も半数いました。「初心者もいる中で、自学自習形式はまだ少し勇み足だったかもしれませんね。しかし裏を返せば、半数は自学自習を希望しているとも言えます」と内田教諭。この経験を活かし、今後はもう少しスキル差にも配慮していきたいと展望を語りました。
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