プログラミング教育実践事例研究会 2022 春 ~EdTech導入補助金によるMonaca Educationの活用事例~ セミナーレポートVol.1 

初めてでもやさしいMonaca Education(女子校での実践)
カリタス女子中学高等学校 山本侑 教諭

全国各地でプログラミング教育に挑む、熱心な先生方。その成果やノウハウを共有し、明日の情報教育発展を目指すのが「プログラミング教育実践事例研究会」です。2020年のスタートから地道に開催を重ね、すっかり恒例となりました。今回は、経産省のEdTech導入補助金を活用して弊社のMonaca Educationを導入した各校から4名の先生方をお招きし、2021年度の実践事例をご発表いただきました。

女子校ならでは? プログラミングへの抵抗感

カリタス女子中学校高等学校は、1960年創立の歴史あるカトリックミッションスクール。新卒3年目の若手・山本侑教諭は、同校初の技術科・情報科専任教諭として入職しました。もともと専門は技術科で、山本教諭自身もプログラミングに長いキャリアを持っているわけではありません。

また、生徒たちは一人1台のiPadを所有していますが「女子校だからか、(男子に比べ)プログラミングへの抵抗感や苦手意識を持つ子も多いと感じました」と山本教諭。少しずつジェンダー理解が進む社会ですが、「プログラミング=男性がやること」という先入観は、生徒自身の中にもまだ残っているのかもしれません。

挑戦は、そんな状況から始まりました。

カリタス女子中学高等学校 山本侑 教諭

同校のパソコン室。3Dプリンターなども備えている

Monacaのテキストに沿って、全8回の授業を実践

授業でプログラミングを実践する目的を「もともと技術科教員だったこともあって、ものづくりや『体を動かす』ことを通して学んで欲しかった」と言う山本教諭。生徒には、Society1.0~5.0への社会的変化と、そこで求められる普遍的スキルの変遷に照らしながら、プログラミング技術の必要性を説いたそう。

しかし、プログラミングに潜在的な苦手意識を持つ生徒たちです。そこで大切にしたのは、とにかく「難しい」と思わせないことでした。実際の授業は、簡単にトピックの説明→テキストの内容をトレースしながら、まずは動かしてみる→解説という流れ。ただし、これだけではインプットのみで終わってしまうため、アウトプットの機会として制作課題(後述)を設定しました。

授業計画は全8回で、弊社のMonaca専用教材(テキスト)に沿って、1回につき1章を進めていきます。ただし、テキストは全12章構成です。これをどのように対応したのでしょうか?

「残念ながら、さすがにすべてを行うには時間が足りません。重要度が高いと判断した8つの章を取りあげ、残りについては、より発展的な関心を示した生徒向けに『この章を読むといいよ』とアドバイスする使い方をしました。また、学びの繋がりを意識して、章の順番を少し入れ替えています。具体的には、条件分岐(5章)のあとに演算子(10章)を学び、それから関数(6章)に入る流れです」。

授業の基本的な進め方と考え方

高1の授業計画。履修する章を選択し、順番も意図的に入れ替えている

オンライン授業の中に、生徒同士の繋がりを作る仕掛けを

もう一つ大きな課題となったのは、当該授業を予定していた時期にコロナの影響が重なり、オンラインで実施せざるを得なかったこと。「2020年のコロナ休校時の経験から、オンライン授業自体には慣れている生徒たちでしたが、自分一人で受講し、自分一人で作業(実習)しないといけません。授業内での生徒同士の繋がりを作りにくい部分がありました」。

そこで、Zoomのブレイクアウトルームを活用。「生徒だけで自由に入退室できる部屋」「教員に質問できる部屋」を作り、授業中に協働や質問をするなど、動的な受講ができる体制を構築しました。山本教諭は2台のPCを用いて、授業用とブレイクアウトルーム対応用を使い分けながら授業を進行したそうです。また、よくある質問についてはFAQ化してYouTube動画を作成、Googleページに埋め込んでナレッジ共有と効率化を図っています。

プログラミングへの抵抗感に配慮しつつ、発展性には加点評価も

制作課題はHTML&CSS、JavaScriptの2種類を課しました。「前者は私がひな型を作って配布し、それをもとに必要なところだけ書き変えて自作するものです。後者も、あんこエデュケーション(弊社のサンプルアプリテンプレートサイト)から、ブロック崩しゲームやおみくじアプリを自分なりにアレンジすることにチャレンジしました。本当はもっとゼロベースからやらせてみたい思いもありましたが、生徒に苦手意識を持たせないという当初の理念を重視して、比較的簡単な内容から始めてみようと」。

ただし、すべての生徒がプログラミングに抵抗を持つわけではありません。もっとやりたいという子や、自分なりに応用・発展を試みる子もいます。そうしたプラスαの作り込みをした生徒は、加点評価するなどの工夫も取り入れました。

成績評価は、知識的な部分を筆記で、実技をMonacaによる課題制作で実施。これから求められる観点別評価については検討中ですが、知識と実技で試験(評価)を住み分けるのが現実的だと考えているそうです。

間違えることも、プログラミングの醍醐味

「Monacaを使って良かったと思うのは、あんこエデュケーションのようなサンプルが多様にあること、(弊社が開設する)Slack上のコミュニティで気軽に情報交換や質問ができること」だと言う山本教諭。特に後者については、今後の情報教育の課題を考えると重要かもしれません。情報科の指導技術を持つ教員不足が叫ばれる中で、横の繋がりを作れる意義は大きいからです。

また、山本教諭自身がプログラミングに高度な専門性を持たない中で始めたからこそ、できることもありました。「『先生もここで間違えたんだよ』と伝えることで、生徒の苦手意識のハードルを下げてあげられますしね。それに、入力を間違えて動かないという経験も、プログラミングの醍醐味だと思います。『コンピュータは言われたことしかできない(人間はそうではない)』と実感してもらういい機会です」。

Slack上のコミュニティで積極的な情報交換を図る

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