プログラミング教育実践事例研究会 2022 春 ~EdTech導入補助金によるMonaca Educationの活用事例~ セミナーレポートVol.5

パネルディスカッション

「プログラミング教育実践事例研究会 2022 春」の締めくくりは、ご講演いただいた4名の先生方によるパネルディスカッションです。お題は、現場で抱えがちなお悩み+参加者のみなさんから寄せられた質問。先生方は、どのように対応してこられたのでしょうか。それぞれの経験談や見解を語っていただきました。

テーマ①「プログラミングの時間が確保できない! 年間の授業計画内での時間の割り振りや、授業外時間の活用はどうすれば!?」

山本:私は、課題の提出期限をあえて長期休暇をまたぐように設定しました。夏休みや冬休みの宿題としてアウトプットできる形にすると、実質の授業時間は変わらず回せるのかなと感じています。

沼崎:学習指導要領の指導順に準拠すると、コンピューターの原理やアルゴリズムについては、概ね中盤や終盤に設定している教科書が多いようです。そのあたりをにらんで2学期にレクチャーを終え、冬休みに応用という形は取れるでしょうね。また、序盤の基礎的なところに時間をかけすぎず、そのあたりをセットの単元として扱えば計画も立てやすくなると思います。

カリタス女子中学高等学校 山本侑 教諭

テーマ②「Monaca Education活用の留意点は?」

友利:最初のアカウント登録に意外と時間がかかる生徒が多いので、そこは気をつけたほうがいいでしょうね。

内田:同感です。下手をすると1週分の授業がそれで終わってしまう可能性もあります。

山本:本校では、当初使用していたフリーのMonaca(無料版)からMonaca Education(有料版)に切り替えたんですね。生徒全員がそちらに設定を変更したと思っていたら、できていない生徒もいました。意外とつまずく点だと思います。

沼崎:本校では、アシアルさんに専用アカウントを発行してもらう形を取りました。自力でアカウント設定をする機会がないという観点では、生徒のスキルを縛ってしまうかもしれません。ただ、2021年度に関しては自宅で作業するケースを設定していませんでしたので、この方法で乗り切った感じです。

また、ログイン画面を「Monaca education」で検索させると、教育機関用ではない一般用のMonacaのほうに入ってしまう生徒もいます。授業ポータルの中にMonaca Educationのリンクを置いておくほうがいいでしょうね。

テーマ③「採点の基準や生徒のデータの確認方法は? 特に『主体的に学習に取り組む態度』をどう判定する!?」

内田:例えば実習時に、学習者が今どういう状況かを確認することが大事だと思います。タイピングをしているのか、あるいはまったく動いていないのかを見るだけでも、ある程度は主体性が読み取れるのではないでしょうか。

沼崎:2022年度から新学習指導要領の3観点で評価していくわけですが、確かに「主体的に学習に取り組む態度」の判断は難しいところです。ただ、国立教育政策研究所が評価の手引きを出していますので、それが参考になると思います。

また、千葉県立高校では各生徒にMicrosoft Teamsのアカウントが配布されています。それで課題を出す際にルーブリックを設定できますので、後から観点ごとに集計することもできると思います。

山本:データの共有に関してはWeb公開の形を取っていますが、知的財産権の問題もあります。ここの説明を事前にした上で課題制作に取り組んでもらい、そのあたりをきちんと意識できているか否かも、評価する軸には入ってくるのかなと。

また、他の先生方と同様、私も課題はGoogleフォームで提出させています。そうするとスプレッドシートで一覧表になりますので、提出や回収はさほど苦ではないですよ。

千葉県立沼南高校 沼崎拓也教諭

テーマ④「共通テスト『情報Ⅰ』に向けての対策はどうする!?」

山本:実は先日、生徒たちに大学入試センターが出している試作問題を解かせてみたんですが、恐ろしいほどにできなくて(笑)。ただ、「まったく分からない」というよりも「時間が足りない」といった感想のほうが多かったです。

また、共通テストへの採用が決まって以来、いろんな問題集が出回り始めています。それらを使って、しっかり問題演習もこなしていきたいです。

沼崎:これから模試の体制も整ってくるでしょうから、まずは模試の傾向を何回か見ることで、対策もしやすくなるでしょうね。

友利:プログラミングの問題には、入試用の独自言語(DNCL)が用いられます。実践を通して、言語を問わないプログラミングの本質理解に慣れておくこと、問題演習をしっかりこなしておくこと、これらをやっておかないと対策は難しいのではないかと感じています。

テーマ⑤「HTMLやCSSを指導する場合、どの時期にどの単元で扱う?」

内田:今回、Monaca Educationを使った授業の中においては、HTMLやCSSはほとんど説明していません。それよりも、プログラミング処理の学習に重きを置きました。他のプログラミング学習と合わせてHTMLやCSSを年間授業計画に入れるのは、少し難しい気がします。

友利:本校もJavaScriptをメインとし、システムの学習に軸足を置いています。時間があればやってみたいんですが、HTMLやCSSにそこまで 時間が取れないのが実情です。

沼崎:例えば生徒たちが就職してWeb ページを扱うとしても、今はコーディングツールもありますからね。必ずしも技術として必携ではないのかなと。

沖縄県立美来工科高校 友利悟教諭

テーマ⑥「プログラミングへの苦手意識は、指導で変化するか」

内田:正直なところ現時点では、導入時の教育がすべてだと思います。ここでつまずくと、なかなかその苦手意識から抜け出せないようです。

友利:生徒は1度それを嫌いになってしまうと、どれだけ簡単な内容でもアレルギー反応を示しますから、導入部分で簡単な成功体験を積ませることが大事だと思います。例えば画像の差し替えなどでもいいんです。

山本:私が初歩の時点で絶対に伝えるのが「人間とコンピューターなら、人間のほうが融通が利いて頭がいいよ」「コンピューターは指示されたことしかできないよ」ということです。すると、うまく動かないときにも「自分の指示が悪いんだな」というスタンスになりやすいです。

沼崎:勉強が苦手な生徒にありがちな行動として、例えば数学なら、答えが出た時点で途中経過を消しちゃうんですよ。「間違えることが恥ずかしい」という感覚が身についているからです。しかし「プログラミングはそうじゃないよ」と意識づけできると、失敗してもいいから途中まで書いて動かしてみるとか、どこを間違えたとか、メタ認知もできるのかなと思います。

内田:スモールステップですよね。プログラミングって。

テーマ⑦「『情報Ⅰ』、言語は何がいいのか」

友利:Pythonは生徒からの反応がとても良かったです。変数制限など、難しい設定などがないので取り組みやすいのでしょう。ただ、変数も大切です。そこの兼ね合いをどうしようかなというのは悩みどころではあります。

内田:高専ではJavaScriptとC言語をメインで教えています。卒業研究で自分が必要になったときにPythonを勉強するケースもありますね。ただ、友利先生もおっしゃられたようにPythonは敷居が低いので、そこからPythonメインに移っていく学生さんが多いのは事実ですね。

沼崎:結論としてはどの言語も一長一短で、JavaScript かPythonならどちらでも良さそうです。ただ、情報Ⅰには「問題解決」というテーマが多く入ってきます。その際にWeb APIを利用するなら、VBAだと少し難しいでしょう。基本的には、学校の特色や先生方の教えやすさで決めていいのではないかと思います。

国立奈良工業高等専門学校 内田眞司教諭

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