アプリ制作事例:『西郷DON』~Monaca Educationでノベルゲーム開発
島田商業 西郷DON は Google Playで入手できます
アシアル情報教育研究所・所長の岡本です。
ノベルゲーム『西郷DON』を開発した、静岡県立島田商業高等学校 情報ビジネス科 3年の松村 愛唯(まつむら あゆ)さんに、ノベルゲーム開発について取材を行いました。
なお、松村さんは『静岡産業技術専門学校 みらい情報科』に進学予定とのことです。専門学校HTML5作品アワードへのエントリー、お待ちしております。
また、静岡県立島田商業高等学校では毎年プレゼン発表を行っており、資料が『slideshare』で閲覧できますので、あわせてご参照ください。
岡本「Monaca Educationを提供しているアシアルの岡本です。今日は取材協力ありがとうございます。まずはアプリのあらすじについて教えてください。」
松村「はい、あらすじは次の通りです。」
ある日、目が覚めると見知らぬ場所に来ていた主人公。
なんと、時は幕末、偉人を輩出した明治維新のふるさと『鹿児島』へとタイムスリップしてしまったのだ。
困り果てた主人公のもとへ偶然通りかかった西郷隆盛。
彼の提案により、様々な者の家を訪ねていくことに。
はたして、主人公は現世へ帰ることができるのか!?
岡本「アプリ『西郷DON』の想定ユーザーはどんな方になりますか?」
松村「静岡県の高校生で鹿児島に興味がある人です。」
岡本「松村さんは元々鹿児島に興味があったのですか?」
松村「はい、また、アプリを作る上で調べていたら益々興味がわきました。」
岡本:「鹿児島にタイムスリップして、西郷隆盛が偶然通りかかって、鹿児島を旅するノベルゲームなんですね。」
松村:「はい。」
岡本:「イラストがオリジナルで全10人のキャラクターが登場。これは大作ですね。ノベルゲーム開発のエンジンとしては、ティラノスクリプトを使用されたと伺っていますが、イラストではどのようなソフトやサービスを利用しましたか?」
松村:「素材として、背景などはイラストACを利用しました。キャラクターはオリジナルで、アイビスペイントを使って描きました。」
岡本:「はじめて聞いたソフトです、それはiPad専用のアプリか何かですか?」
松村:「iPadでも動きますが、スマホ上で描きました。」
岡本:「ティラノスクリプトをMonacaで動かす上で何か困ったことはありますか?」
松村:「ティラノスクリプトをMonaca Educationに入れ、動作を確認しながらアプリ開発を行っていたので、移植に関して困ることはありませんでした。」
岡本:「音なども再生できましたか?」
松村:「調べながら対応しましたが、問題ありませんでした。」
岡本:「アプリのデータ量が溢れて大変なことはありませんでしたか?」
松村:「トラブルにはなっていないですが、音とか動画が容量を使うので100MB近くになりました。」
岡本:「ありがとうございます。次は開発体制についてお聞かせください。」
松村:「3人体制で、シナリオ、イラスト、プログラミングに別れて作業を進めていました。」
岡本:「企画~リリースまで、どれくらいの期間と工数が掛かりましたか?」
松村:「4月から1月にかけての10ヶ月です。週5回の50分授業と、進捗状況にあわせた自宅での作業で進めていました。計画では12月前に完成させる予定でしたが、実際には、開発しながら発表準備をする形になってしまいました。」
※12月は発表準備を計画していましたが、実際には、開発しながら発表準備を行った。
岡本:「月に約20時間づつ作業を行ったとして、10か月なので約200時間。3人体制なので総工数は約600時間ぐらいですね!」
松村:「はい、そうなります。」
岡本:「計画を拝見する限り、プログラミングの工程はかなり後ろの方に来るのですね。その間、プログラミングが主担当の人は何をされていたのでしょうか?」
松村:「私がプログラミング担当でしたが、ノベルゲーム開発の実装の準備を勧めつつ、他のメンバーが間に合っていないところをサポートしたりしておりました。」
岡本:「ありがとうございます。開発が伸びてしまった理由、あるいは、再度、ノベルゲーム開発のプロジェクトがあったとしたら、どのように対策したいですか?」
松村:「シナリオやデザインの進捗がしっかり把握できなかったので、はやめに作業時間の確保に動けば良かったと考えております。」
岡本:「なぜ遅れてしまったのでしょう。無駄な作業が発生していたとか、作業に手戻りが発生していたとか、何かトラブルがあったのでしょうか?」
松村:「それもあります。これもやらなきゃ、あれもやらなきゃ、といった形で、タスクが大量に発生し、それを各自がバラバラに、五月雨式に対応を行い、進められない作業というのが発生してしまいました。」
岡本:「Aさんの作業が終わらないとBさんが作業に入れない、みたいな、依存関係にあるタスクによって、メンバーに「待ち」が発生してしまったのですね。」
松村:「はい。」
岡本:「プロジェクト管理ツールの導入は検討されましたか?」
松村:「いえ、未検討でした。」
岡本:「この規模の開発だと、必要なケースもあるかもしれませんね。ツールの使い方の習得にコストがかかりますが。ところで、他のチームも、作業時間はだいたい同じぐらいでしたか?」
松村:「はい、同じぐらいだと思います。」
岡本:「後輩や、他の学校でノベルゲーム開発に挑戦する人にアドバイスするとしたら、やはり…」
松村:「はい、進行管理が重要ですね。」
岡本:「ちなみに、プロジェクト管理ツールは使っていなくても、必要なタスクを書き出す、みたいなことは、されましたか?」
松村:「はい、それは行いました。しかし、実際に進めてみたら計画通りにはいかなかった、という形です。」
岡本:「進行を管理して、予定とズレている部分を調整する役が必要だったのですね。」
松村:「はい、Googleスプレッドシートにタスクを書き出してはいたのですが、完了のチェックを付けたりなどの、管理が困難でした。」
岡本:「タスクが溢れると大変ですよね。3人体制より4人体制の方がノベルゲーム開発は行いやすいですかね?」
松村:「そうですね、ノベルゲームの場合は、進行管理をメインとする人があと1人いるとやりやすいかもしれません。」
※岡本注:ただし4人体制の課題制作は、1人が手持ち無沙汰になるケースもあるので、一概に、4人体制が良いとも言い切れません。
岡本:「ノベルゲーム開発を行って、良かったことを教えてください。」
松村:「ゲームを開発するまでの流れや、具体的な方法など、実践的な活動を通して学ぶことができました。また、私はプログラムを担当したので、HTMLやJavaScriptなどの言語に触れることで、プログラムの流れを読む能力が身につきました。」
岡本:「今回の作品作りは、まさに『プロジェクト』という規模や成果物でしたが、一変だったことは何でしょうか?」
松村:「2年の授業がJavaだったのですが、今回はJavaScriptだったので、言語の違いは大変でした。」
岡本:「どのあたりで苦労されましたか?」
松村:「関数の種類が違うのと、型の考え方の違いなどです。ノベルゲーム開発で重要な分岐などは、ほぼ同じ考え方だったので、問題ありませんでした。」
岡本:「今回はゲームのために、サイトも作られたのですね。」
松村:「はい。サイト等に関しては、どうしたら見やすいサイトを作ることができるか、UIに気を使いながら作成していくことができ、利用者の立場に立って考えることができたと思います。」
岡本:「作品を作ること、それを世に発信することは色々と成長に繋がると思うのですが、特に成長を感じた点についても教えてください。」
松村:「グループ活動を通して、人に指示する能力が身につきました。上手く進まなかった作業への臨機応変な対応で、グループに貢献することができたと思います。また、指示をするために全体を把握するという能力も身につきました。」
岡本:「プロジェクトならではの部分もありましたか?」
松村:「『ほう・れん・そう』の大切さを身をもって実感しました。各々の作業を進めることも大事ですが、お互いの作業内容を把握していないと、実は何も進んでいない、と言った作業が生まれてしまうことがありました。グループとして足りていないところを補いあったり、判断に迷うことがあったら相談しながら話を進めていくことがとても大切だと感じました。」
岡本:「ありがとうございます。最後に、Monaca Educationに対して、何かご要望はありましたか?」
松村:「特にありません。使いやすかったです。」
島田商業 西郷DON は Google Playで入手できます
鈴木滋先生の補足:
鈴木:「クラスの人数が42名なので、3名x14チームで分けました。今回は得意分野を考慮したチーム分けではなく、好きなメンバーで組める自由形にしました。」
岡本:「自由形のメリット・デメリットは今回、どんな形で現れましたか?」
鈴木:「チーム内での連絡は取りやすいのですが、同じ性別で固まる傾向がありました。」
岡本所長のあとがき:
ノベルゲーム開発はPBL(プロジェクトベースラーニング)の題材として、とても良いと感じました。私もこのような学びを行ってチームワークを学んでから社会に出たかったと思いました。専門高校や専門学校では、是非、プロジェクト型の演習を積極的に行ってほしいと切に願います。