ミラコンで和歌山県教育委員会肥田氏による講演「和歌山県におけるプログラミング教育 ~きのくにICT教育~」が行われました

2019年12月21日~22日に開催された、教育コンテンツの現在・未来に関するツールやプロダクトを展示するイベント「ミラコン(未来の教育コンテンツEXPO)」で和歌山県教育庁学校教育局県立学校教育課(兼)義務教育課指導主事の肥田真幸氏による講演「和歌山県におけるプログラミング教育 ~きのくにICT教育~」が行われました。

 

講演のなかで弊社が支援を行っている高等学校におけるプログラミング教育や実際にMonaca Educationが学校で活用されている様子も紹介されていましたので、講演概要をご紹介させていただきます。

プログラム教育をなぜ行うのか

肥田氏:プログラミング教育は、小学校では2020年度から全面実施、中学校では2021年度から全面実施、高校では2022年度から年次進行実施となっています。これに先駆けて和歌山県では2019年度からプログラミング教育を始めています。

 

肥田氏:ある資料によれば、21世紀のここまでの20年の技術進歩は、20世紀100年間の進歩を超えてしまっているのだそうです。この急激に変化する時代を生きる子供たちを私たちは育てないといけません。

ある飲食チェーン店でロボットのPepperを導入し、受付などの接客を中心に業務を任せたそうです。その結果、例えば、スタッフのクレーム対応の時間が減などの効果があり、シフトの見直しなども行えたそうです。

また、ロボットは疲れません。営業時間中休まず働くこともでき、時給換算すると167円くらいだったそうです。全体の投資額は決して小さくなかったそうですが、それ以上の効果があったそうです。

単純な作業がロボットなどに取って代わられる時代を生きる子供たちには、クリエイティブに、ロボットを使えるような人材に育ってもらわないといけません。そこで情報教育やプログラミング教育が重要なものの一つになってくると考えています。

小中高での体系的なプログラミング教育の実施

肥田氏:「きのくにICT教育」では、情報活用能力を身につけて、来るべき社会で活躍できる人材を育成しよう、というねらいがあります。小学校の段階を体験期と位置づけており、プログラミングに慣れ親しんでもらう時期です。「プログラミング自体を学びなさい」ということではなく、プログラムという道具を通じて授業のねらいを達成していきます。各学校には3人に1台のアーテックのロボットキットが行き渡るようにし、実習を通じてプログラミングに触れてもらっています。

 

肥田氏:中学校の段階を基礎期として位置づけており、プログラミングを学び始め、また高校での応用に繋げてもらうねらいです。中学校では小学校と同様のアーテックロボットを使います。また、micro:bitを使ったプログラミングも学びます。

 

肥田氏:高校の段階を応用期として位置づけており、アプリを制作する活動をしながらHTMLやJavaScriptを学びます。プログラミング環境はクラウドサービスのMonacaを使っています。単にJavaScriptの文法を覚えるだけではなく、制作するアプリのフローチャートやカスタマイズ案などを考え、実際にアプリ制作を行う授業を展開しています。

プログラミング言語としてHTMLとJavaScriptを選択した理由としては、現時点で、これらの言語の普及率(Web上で使用されている率)が世界で最も高く、実行環境もブラウザのみで済むため。すぐに手元で動作させられるものが作れるのが良いです。さらにタブレットを使うことでGPSセンサーなどを使ったプログラムミングもでき、幅が広がります。Monacaではクラウド上にプログラミング環境が整備されているので手軽に使えます。環境構築や設定などの面倒なところが少なくて、プログラミングの学習に集中できるのが良いと感じています。

先生同士をより繋ごうという試みも県でやっていこうとはたらきかけています。小・中・高の校種間の先生の交流も図り、指導案や教材も全ての学校で閲覧できるようにWeb掲載しています。教員研修もしつつ、プログラミング教育支援員の派遣も行っています。プログラミング教育支援員には主に

  • 機器のトラブル対応
  • 児童・生徒からの質問対応
  • 授業の準備
  • 校内研修

などをお願いしています。来年度も実施する予定です。

プログラミングの成績評価について

肥田氏:子供たちの評価をどうするかということもポイントです。大切なことは、子供たちに身につけてもらいたい力は何なのか、ということです。もしコーディングの知識テストだけで評価するのであれば、子供たちはコーディングしか覚えない、ということになるかもしれません。
どんな力をつけてほしいのかを、子供たちに明確に提示してあげる必要があります。それは知識なのか、粘り強く取り組むことなのか、論理的な思考力なのか、協働する力なのか、発想力なのか。

単に「プログラミングをしました」で終わっては子供たちのためにならないです。

また、プログラミング教育においては教師よりも生徒・児童の方が技能が高かったり、理解が速かったりするケースも出てきます。だからこそ、プログラミングの知識ではなく教師の学びを導く力はより重要になります。そして分からなければ、子供たちに「一緒に考えよう。」と横に座って一緒に考えることが大切だと私は思います。

きのくにICT教育の取り組みや実際の授業の様子ついては、教育広報番組「はばたく紀の国~教育は今~」でも紹介されているのでご覧ください。

きのくにICT教育(和歌山県教育委員会Webページ)