プログラミング教育実践事例研究会 2022春 ~EdTech導入補助金によるMonaca Educationの活用事例~ セミナーレポートVol.3
コロナ禍におけるMonacaの活用と今後の活用について
沖縄県立美来工科高等学校 友利悟教諭
全国各地でプログラミング教育に挑む、熱心な先生方。その成果やノウハウを共有し、明日の情報教育発展を目指すのが「プログラミング教育実践事例研究会」です。2020年のスタートから地道に開催を重ね、すっかり恒例となりました。今回は、経産省のEdTech導入補助金を活用して弊社のMonaca Educationを導入した各校から4名の先生方をお招きし、2021年度の実践事例をご発表いただきました。
OSを問わない開発環境を求めて
美来工科高校は、その名のとおり工科系の高校。ITシステム科やコンピュータデザイン科など、全国でも珍しい情報系の専門学科を2学科有しています。その中で、友利悟教諭は工業科の電子システム科に所属し、Monaca Educationを使ったプログラミングの授業を始めて約8年。生徒たちはチームを作り、アプリ開発の課題研究を行っています。そういう意味では、彼らのITリテラシーは一般的な高校生のそれよりも高いと言えるかもしれません。
また、電子システム科の特性上、JavaScriptよりもC言語を使うことが多い同校。それでもMonaca Educationを選んだ理由を、友利悟教諭はこう語ります。「当初はApp inventor(Android対応のアプリ開発ソフト)を使っていましたが、iPhoneで稼働させたいという声も多くて。一方で学校の端末もWindowsしかなかったため、ブラウザ上で操作できる上にOSも問わない、Monaca Educationを活用することにしたんです」。
Monaca EducationとMicrosoft Office365の併用
そんなとき起こったのがコロナ禍。思ったように時間が作れず、授業進行には苦労したと言います。2021年度は6月7日~18日が休校、その他にも50日以上が分散登校となり、オンラインやハイブリッド授業で対応してきました。中でも大変だったのが「課題研究を行うグループメンバーが対面で揃わないことだった」と言う友利教諭。スムーズな協働環境を作ることが急務でした。
ただ、コロナ第一波時の経験から、今後も休校や分散登校が起こることは想定していたそう。2020年度より、課題研究の運用にMicrosoft Office365を用いており、それを活用して問題を乗り越えます。
では、実際にどんなスキームで課題研究を進めたのでしょうか。「基本的にはMonacaとMicrosoft Teamsの併用です」と友利教諭。まず、Monacaではプログラミングの実作業や課題の提出・共有を。そしてTeamsの各機能「チーム」で情報共有、「ファイル」で資料や素材の共有と保管、「forms」で授業の振り返りを記入する形を取りました。
このほか心がけたのは、Teamsのメンション機能で、届いた質問等にすぐ気付けるようにしたことや、メモなどのアナログなデータは写真・PDFで共有し、チーム内で情報漏れが起こらないようにしたこと。
複雑なプログラミングへの質問対応やレイアウトの確認など、リアル対面のほうが望ましいケースもありましたが、授業に大きな支障はなく、生徒たちは無事に課題を完成させることができました。
授業での活用は、Monaca Education(有料版)のほうが格段に便利
友利教諭は、Monaca Education導入のメリットを改めてこう振り返ります。「やはりブラウザベースの稼働で、事前に開発環境を作らなくていいのは魅力です。C言語を使っていたときは、ここにかなり時間がかかっていました。Monaca側でサンプルプログラミングが多数用意されているため、それを改良して生徒たちが自分で考えながら進められたのも良かったですね。(Monacaで用いる)HTMLやJavaScriptに関する書籍はたくさん出ているので、活用もしやすいです。ただ、Monacaに特化した書籍はまだ少ないので、そのあたりは今後の課題でしょうか」。
また、今回のMonaca Education導入にはEdTech導入補助金を活用していますが、フリーのMonaca(無料版)とMonaca Education(有料版)を比較使用してみた上で、その違いにも言及しました。「無料版はプロジェクト数が3つなのに対し、有料版は20~100。エクスポート機能やビルド機能、共有機能の有無にも違いがあるので、授業で課題提出などを考えるのであれば、やはり有料版のほうがかなり使いやすいです」。
「進路紹介アプリ」や「沖縄Search」などの学習アプリを開発
同校のプログラミング学習(アプリ制作)は、自由にゲームなどを作るというよりも、学習的な要素が色濃いことが特長。友利教諭は「個人的には、学習課題を解決する『学習アプリ』を作るのが1番良いと感じている」と言います。
2021年度に生徒たちが作ったのは、まず「進路紹介アプリ」。Monacaのおみくじアプリを改良して作りました。おみくじを引くと、占い結果の代わりに具体的な大学や企業などの「進路候補」が紹介されるというユニークなものです。
課題研究では「沖縄Search」という地域の魅力発信アプリの制作にチャレンジ。沖縄県の各市町村にまつわる特徴紹介や、クイズが搭載されています。市町村章から自治体名を当てたり、市町村章のデザインの由来が解説されたりなど、楽しみながら、地元・沖縄の特色を学習できるのです。
また、開発にあたってはJSON(データ交換フォーマットの一つで、異なるプログラミング言語間でデータの受け渡しができる)も利用しました。「少し難易度は上がりますが、これもうまく活用できたと思います」(友利教諭)。
実践を通したプログラミング学習が、共通テスト対策のカギか
今後も、身近な課題解決を中心にしたアプリ開発授業を進めていきたいと言う友利教諭。その先の共通テストを見据えては「おそらく、“写経”的な授業をしているだけでは対応できないだろう」と私見を述べます。「試験は独自言語による出題になりますので、高校でどの言語を学ぶかよりも、プログラミングに対する本質的な理解が重要です。そのためには、アプリ開発などの『実践』を通して学ぶことが欠かせないと思います」。
「情報Ⅰ」がスタートし、それをふまえた共通テスト対策への不安がまだまだ多い現在。アプリ開発は、その有力なヒントになる可能性を秘めていそうです。
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